
ごあいさつ - 多摩川アートラインの2007年を振り返って
ABOUT > 2008.08.09
アートラインウィークを終えた12月のある晴れた朝、私は、多摩川台公園の階段を上り、多摩川を見渡せる高台に立っていました。公園のべイヴメントにくっきりと影を落とした桜の樹にもちろん花芽はなく、幹の根元を歩くと霜柱がざくざくと砕けて光る。春になるまで下草がないかわりに一面の笹の葉が風が吹くたびにサーっと音を立ててそよぎ、その笹の葉越しに横たわる多摩川は、まるでそれ自体が巨大な銀色の魚であり、さざ波が鱗であるかのように河口である羽田へと向かう。
そんな風景を見るともなしに見ていたら、すべてはこのままなのではないか、このままでいいのではないかという感慨が押し寄せて来ました。しかし同時に、私は次のことも考えました。
世界にはこのままにしていいものなど何一つなく、本質を失わないことと現況を放置することの間には大きな隔たりがあるという認識を、だからこそ忘れてはならない、と。
伝統社会の崩壊、経済的社会的な流動化が高まり、環境問題等に代表される世界規模での巨大な社会変化を迎えている現代、行政や大企業に見る従来の枠組みによって解決できる問題は極めて限られています。これからは、複雑な相互依存の中でお互いに何が出来るかということを真摯に辛抱強く模索する必要があります。況して、2010年に羽田空港の国際ターミナルがオープンしてアジアのゲートとなる多摩川下流域において、そのことは責務といえるのではないでしょうか。そんな思いから、多摩川アートラインはスタートしました。
多摩川アートラインは、多摩川下流域エリアの鉄道(アートライン)・駅(アートステーション)・街(アートタウン)を舞台に市民と企業と行政で取り組む現代アートによる街づくりの活動です。
具体的には、2007年から2009年までの3年間の毎年、上半期に企画発表のシンポジウムを、下半期にアートラインウィークと題したイベント期間を設け、公共スペースへのパブリックアートの設置、ワークショップやコンサート等の様々なイベントの開催や作品の制作過程を通じて、現代アートを媒体に文化・産業・歴史・風景・人々をつなぎ、グローバルかつローカルな公共性の創出を目指します。
その実施初年度となった207年は、国内外で活躍する16組の現代アーティストによる22作品を東急多摩川戦前7駅(多摩川・沼辺・鵜の木・下丸子・武蔵新田・矢口渡・蒲田)の駅舎をはじめとした公共スペースに設置し(既存の駅舎への大がかりなパブリックアートの設置はおそらく日本で初めての試みでした)、併せて、公園や神社や商店街での数多くのイベントを開催しました。また、22作品中15作品は常設が認められ、現在でも1日平均25万人の人々の目を潤しています。
さらに、こうした成果を受けた2008年は、よりグローバルでローカルな地域づくりに取り組むべく、一方では学校・公園・商店街・町工場等と連携したプログラムを充実させ、教育や産業振興へのいっそうのコミットメントを図ること、もう一方では羽田空港ターミナルや京急空港線との連携を模索するとともに、ソウル・北京をはじめとするアジア諸都市の国際的ギャラリーエリアやアーティストと双方向的な事実を展開することを計画しています。
本ウェブサイトでご紹介しているのは、以上の活動の中から2007年の実績を作品集という形式でまとめたものです。掲載されたアートワークは、いずれも余剰兼の中で私たちが最善を尽くした結果であり、こどものようなものですが、だからといってそれが唯一の答えであるというわけではありません(もしかしたら、答えですらなく問いなのかもしれません)。
批評でも賛同でもかまいません、一人でも多くの人がポジティブな姿勢で公共へと参画するきっかけになれば、待たそう下刃としてこのプロジェクトが一人一人の市民のものになればと願うばかりです。民間主導による非営利な国際的なパブリックアートの活動は都市部での事例が少なく、まだまだ乗り越えなければならない課題は山積みですが、日本では極めて希薄な「佼」と「氏」を媒介とする中間領域の形成と、それを対話の場とした未来開拓的な共同産出への長い積み重ねの1つの礎、ささやかだけれど心躍る挑戦になればと希望しています。そして先ずは、街角に手紙のように置かれたパブリックアートの前に立ち、希望にも似たものを感じていただけるとしたら(何かを分かち合うことがパブリックアートの古来からの役割ですから)、それに勝る喜びはありません。
末尾に月並みではありますが、2007年の多摩川アートラインにそれぞれのかたちで関わってくださった多種多様のたくさんの方々、好むと好まざると二関わらず常設のパブリックアートを日々の生活の片隅においてくださっている方々に、心からの感謝を申し上げます。
2008年早春、オフィスにて
田中常雅
主催者代表幹事
田中裕人
事務局長
特集
2008年度グッドデザイン賞受賞!!
- 多摩川アートラインプロジェクトが、 2008年度グッドデザイン賞を受賞しました!!
多摩川アートライン アートラインウィーク2008 イベントスケジュール
- 多摩川アートライン アートラインウィーク2008 イベントスケジュールが決定しました。
ごあいさつ - 多摩川アートラインの2007年を振り返って
- 多摩川アートラインは、多摩川下流域エリアの鉄道(アートライン)・駅(アートステーション)・街(アートタウン)を舞台に市民と企業と行政で取り組む現代アートによる街づくりの活動です。
多摩川アートライン・サポーターズクラブ
- 多摩川アートラインの活動は、多くの個人や企業や団体の有形無形のご支援のもとに成り立っています。そして、この度、ご支援を頂くだけでなく、より多くの方々とプロジェクトを楽しみたいというスタッフや参加アーティストの思いから、サポーターズクラブが発足致しました。